企業価値担保権の創設、登記との関係
日本の民法に定められている物権(ぶっけん)は、物を直接的に支配する権利の総称で、いろいろな分類はさておき、10個、あります。
その他にも、民法には直接の規定がありませんが、判例や慣習法により認められている強力な非典型担保物権である、譲渡担保権もあります。譲渡担保権は、債権の担保として目的物の所有権を債権者に形式的に移転させつつ、債務者は引き続きその目的物を利用できる「約定担保物権」です。
さて、そんな感じで、民法には直接の規定がない物件、企業価値担保権、が新しく2026年5 月25日、創設されます。
事業性融資の推進等に関する法律
企業価値担保権、を創設したのは、「事業性融資の推進等に関する法律」です。事業性の融資の推進等に関する法律は、令和6年6月7日に成立し、令和8年5月25日から施行されます。
企業価値担保権は、有形資産に乏しいスタートアップや、経営者保証により事業承継や思い切った事業展開を躊躇している事業者等の資金調達を円滑化するため、無形資産を含む事業全体を担保とする制度として、満を持して登場した感じです。
登場人物紹介(関係当事者)
まずは登場人物(関係当事者)をご紹介。
〇設定者兼債務者(委託者)
・会社法上の「会社」、つまり株式会社か持分会社に限定。(新法2条2項、6条1項、会社法2条1号)
・債務者以外の者が企業価値担保権の設定者となること(物上保証)は禁止。(新法13条1項)
〇担保権者(受託者)
・新法32条の内閣総理大臣の免許(みなし免許(新法33条)を含む)を受けた「企業価値担保権信託会社」(新法6条2項)に限定。(新法8条2項2号)
〇債権者(受益者)
・新法への対応にあたって、企業価値担保権の受益者となる各金融機関は、金融庁の考え方を理解し、各金融機関の方針等に応じた引当方法の策定や債務者へのモニタリングが求めらる。(制度趣旨が、「金融機関による債務者の事業経営のモニタリングと事業継続・成長支援の促進」であるため)
登記との関係
企業価値担保権は、債務者(委託者)と担保権者(受託者)での「企業価値担保権信託契約」(新法6条3項)に基づいて設定される物権(新法7条4項、8条1項)です。
原則として、
〇債務者の本店所在地において商業登記簿にその登記をすることにより効力が発生(新法15条)
〇他の担保権(たとえば抵当権、根抵当権)との優先順位は、対抗要件具備の先後による(新法18条)
〇債務者の総財産を対象としなければならず、一部の財産のみを対象とすることは認めらない。
〇取締役会設置会社では、定款で別段の定めがない限り、設定については取締役会の決議事項(新法10条2号)
ということが定められました。
債務者は、企業価値担保権設定後も、担保目的財産の使用、収益および処分をすることができます(新法20条1項)。
ただし、
〇重要な財産の処分等通常の事業活動の範囲を超える担保目的財産の使用
〇収益および処分
する場合には、企業価値担保権者の同意が必要です(同条2項)。
同意を得ていない行為は無効となりますが、善意無重過失の第三者には対抗できないとされます(同条3項)。
実行手続は
企業価値担保権の実行手続をまとめます。
〇企業価値担保権者が裁判所へ申立てをして、開始
〇開始決定
〇管財人の選任
〇管財人による事業継続→(可能な限り高い企業価値を維持)
〇事業譲渡等による換価→(事業を解体せず、原則、事業を一体として承継)
〇債権届出・調査
〇確定
〇配当→(受益者の金融機関等が事業譲渡の対価から融資を回収、一般債権者にも対価の一部を確保)
という手順が予定されています。
まとめとして~登記業務で気をつけたいこと~
企業価値担保権は、商業登記簿に設定の旨が登記されるのですが、不動産登記のときにも気を付けなければいけないことが出てきました。
例えば、企業が所有する不動産の所有権移転登記をする際に、商業登記簿に企業価値担保権の設定を確認した場合には、企業価値担保権者の同意書の添付の必要性を検討しなければならないでしょう。同様に、抵当権や根抵当権設定の場面でも当てはまると考えます。
それにしても、商業登記簿で企業価値担保権の設定に出会う日が楽しみです。
実際にみてどうなのか、またコラムで書けたらと思います。
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(コラム記事参照元:金融庁HP>企業価値担保権(旧事:業成長担保権)について、とその先のリンクページ)