保佐人(ほさにん)てなに?後見人と違うの?
成年後見制度、といえば「後見人」という言葉が一番有名でしょうか。
実は「後見人」の他に、「保佐人」「補助人」という役割の違う援助者がいます。
今回は、「保佐人」について、「後見人」と比べながらわかりやすく解説します。
まずは成年後見制度の全体像から
まずは全体像の整理をします。
成年後見制度は、認知症・知的障害・精神障害などの精神上の理由で判断能力が不十分な人の財産を守り、生活をサポートするための制度です。
後見人等の主な業務は「財産管理」と「身上監護」の2種類です。
財産管理は、本人に代わって、適切な契約行為や本人が所有する財産の管理を行います。
身上監護は、本人に必要となる福祉・介護サービスの契約締結や手配、医療費の支払いなどの代理行為を行います。食事の世話や入浴の介助といった介護の実務は行いません。
成年後見人制度は、「任意後見制度」と「法定後見制度」の2つに分かれます。
任意後見制度は、判断能力があるうちに前もって契約してリスクに備える制度。
法定後見制度は、本人の判断能力がすでに不十分になっている状態で開始します。
任意後見制度とは違い、法定後見制度では、本人の判断能力の度合に応じて「後見」「保佐」「補助」の3段階に権限が分かれており、それぞれの権限を与えられた人を「後見人」「保佐人」「補助人」と呼びます。全部まとめて「成年後見人等」と呼ぶこともあります。
保佐と後見の主な違いは2つ
先に整理したことを踏まえて、保佐と後見を比較した場合、主に次の2つの点が異なります。
1.本人の判断能力の程度が違う
保佐人が選任されるためには、本人が「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分」であることが要件です(民法11条)。裁判所の基準では、「支援を受けなければ、契約等の意味・内容を自ら理解し、判断することができない」と認められる場合には、上記の保佐要件に該当するとされています。
一方、成年後見人が選任されるには、本人が「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況」にあることが要件とされています(民法7条)。
裁判所は、「支援を受けても、契約等の意味・内容を自ら理解し、判断することができない」レベルに判断能力が低下した場合に、成年後見の対象になるという基準を示しています。
保佐要件と比較すると、本人が、支援を受ければ契約の意味内容を理解・判断できるのが「保佐」、本人が、支援を受けても理解・判断できないのが「成年後見」ということになります。
2.成年後見人には、保佐人よりも広範な権限が認められている
保佐よりも判断能力の低下が進行した人に対して開始されるのが後見です。
ですので成年後見人には、保佐人よりも広範な代理権・取消権が認められています。
保佐人の場合、民法13条1項各号に規定される行為(下に詳しく書きます)についてのみ同意権・取消権が与えられており、また代理権の付与には家庭裁判所の審判が必要です。
これに対して成年後見人には、財産に関するすべての法律行為について、当然に代理権が与えられており、日常生活に関するものを除き、成年被後見人によるすべての法律行為を取り消すことが可能です(民法9条)。
保佐人にできること
保佐人にできることをもう少し具体的に見ていきます。
〇同意権・取消権
本人(被保佐人)は、保佐開始の審判があると、民法第13条第1項の行為(財産上の重要な行為)を行うには、保佐人の同意が必要になります(同意権)。また、上記の行為のほかに、同意を要する行為を追加することもできます(裁判所へ申立必要)。保佐人の同意を得ないでした行為は、保佐人が後で取り消すことができます(取消権)。※ただし日常生活に関する行為を除く。
保佐制度は、あくまで本人の自立を尊重する制度なので、日常生活に関する行為は本人が自由に行うことができ、保佐人の同意は不要です。
〇代理権
裁判所へ「代理権の付与」の申立をし、審判がなされると、保佐人はその審判で定められた法律行為を被保佐人にかわって行うことができます。
保佐人の同意権の範囲(民法第13条第1項)
保佐人の同意権の範囲は、民法で定められています。
よく見られる具体例は以下のとおりです。
・預貯金の払い戻し
・貸したお金を返してもらう
・お金を貸す(利息付)
・借金(金銭消費貸借契約の締結)
・保証人になる(債務保証契約の締結)
・不動産の売却・賃貸借・抵当権設定
・通信販売、ネットショッピング、訪問販売による契約の締結
・クレジット契約の締結
・先物取引、株式の購入
・訴訟行為
・贈与をする、和解、仲裁合意をする
・相続の承認、放棄、遺産分割をする
・贈与の申込を拒絶する、遺贈を放棄する、負担付贈与の申込みを承諾する、負担付遺贈を承認する
・新築、改築、増築、大修繕をする
・山林(10年)土地(5年)建物(3年)動産(6カ月)をそれぞれ超える期間で賃貸借契約を締結する
また、被保佐人が行った上記の契約を有効だと認める追認権も、保佐人には認められています。
保佐人だけではできないこと
保佐人が、単独では行えない行為があります。
特に重要な行為として、本人の居住用不動産(自宅など)の売却や取り壊し、担保設定などは、保佐人の権限だけではできません。これらの行為を行うには、より慎重な判断が必要であり別途、家庭裁判所の許可を得る必要があります。
また、結婚、離婚、養子縁組、遺言といった本人の一身専属的な権利(身分行為)については、保佐人が同意したり代理したりすることは一切できません。これらは本人の意思のみによって決定されるべき事柄だからです。
制度利用には裁判所への申し立てが必要
保佐人を選任するには、成年後見人と同じように、家庭裁判所に申立を行う必要があります。必要な書類を揃え、家庭裁判所に申立を行うと、調査官によって審理(調査・鑑定・審問)が行われ、その結果を踏まえて裁判官が保佐を開始するかどうかを審判し、保佐人となる人を選任します。選任された内容は法務局で登記され、誰でも確認できるようになります。
まとめとして
ご家族や大切な人の判断能力が低下した場合には、保佐を含む成年後見制度の利用をご検討ください。
適切に成年後見制度を利用すれば、本人の権利や財産を守ることにつながります。
ひふみリーガルオフィスでは、保佐や後見、補助など成年後見制度の利用に関するご相談を承っております。司法書士が具体的な状況を伺うことで、利用すべき制度を適切に選択することができます。
また、申立書類の作成など、様々な側面からご本人の権利や利益を守るために幅広くサポートいたします。
保佐や後見、補助など、成年後見制度の利用を検討されている方は、ぜひ、ひふみリーガルオフィスまでご連絡くださいね。