わかりやすくシリーズ~①任意後見契約~
年末年始、普段は会わない近しい人達と顔を合わせる機会がある方は多いのではないでしょうか。
そんな機会には、ご親族や親しい人と、ご自身の将来についてぜひ話しあっておいて欲しい、という思いをこめて、今回は「任意後見」という制度についてわかりやすく解説します。
任意後見は法定後見となにが違うの?
ひとりで決めることに不安のある方々を法的に保護し、支援するのが成年後見制度です。
成年後見制度には「任意後見」と「法定後見」の2つの種類があります。
任意後見とは
ひとりで決められるうちに、認知症などの場合に備えて、あらかじめ自分で選んだ信頼できる人(任意後見人)に、自分の代わりにやってもらいたいことなどを契約(任意後見契約)で決めておく制度です。
法定後見とは
ご本人がひとりで決めることが心配になったとき、家庭裁判所によって、成年後見人等が選ばれる制度です。後見人は家庭裁判所が決めた人が就任します。
つまり、とっても簡単に言えば、ご本人が自分の後見人を自分で決めて契約しておくのが任意後見、裁判所が選んだ後見人が就任するのが法定後見です。
任意後見契約についてもう少し詳しく知ろう
任意後見契約は、公正証書で行います。
ひとりで決めるのが不安になった時に任意後見人にやってほしいことリスト(代理権目録)も契約の内容となります。
契約後にご本人の判断能力が不安になった時、家庭裁判所で任意後見監督人が選任されたときに、任意後見人としての仕事を開始することになります。
任意後見契約が締結されると、指定法務局(長野県内だと東京法務局)でその旨が登記されます。任意後見人が本人を代理して契約する場合に、法務局から「後見登記事項証明書」の交付を受けることにより、任意後見人は自己の代理権を証明することができます。取引の相手方も、任意後見人から、その「後見登記事項証明書」を見せてもらうことにより、安心して本人との取引を行うことができます。「後見登記事項証明書」は、信用性の高い文書で、銀行等への届出の際にも必要になることがあります。
セットで検討したい、見守り契約、財産管理契約、死後事務委任契約など
任意後見契約は、移行型、という形で締結されることが多いです。
判断能力はバッチリで問題無くても、ケガをしてから銀行に行くのがしんどくなってきた、とか、だんだんと身体が不自由になってきた、など、たとえ判断能力が低下する前であっても信頼できる人に財産管理を任せる契約を追加しておくのが「移行型」です。
「財産管理契約」を任意後見契約と一緒に公正証書で締結すると、契約の時から、又はお互いに決めた条件が起こった時から財産管理が始まります。お元気なうちはこの財産管理の契約に基づいて、財産を管理してもらい、時間が経つうちに判断能力が低下したときには、任意後見開始を家庭裁判所に申し立てることにより、任意後見契約に移行します。
さらに、財産管理契約が発動する前までの間に「見守り契約」を締結しておいたり、任意後見契約の終了後について「死後事務委任契約」を締結しておくなど、移行型の契約は自由設計できます。ご自身の希望や願いを実現できるような設計をおすすめします。
任意後見契約のデメリットはあるの?
任意後見制度には注意が必要なデメリットもあります。
〇任意後見人に取消権は認められない。
法定後見人である成年後見人、保佐人、補助人には、本人の行為について取消権が認められています(民法9条、13条4項、17条4項)。これに対して、任意後見人には取消権が認められていません。
つまり、法定後見人とは異なり、本人が不利益な契約を結んでしまっても任意後見人が一方的にその契約を取り消すことはできません。これは、任意後見制度が本人の自主性を尊重する方針に基づいているためです。
ただし、任意後見契約書の内容を工夫することで、一部の不利益な契約(悪質な訪問販売など)への対応を代理権として定めることは可能です。例えば、任意後見契約書に、特定の状況下での「代理権」として、「訪問販売や通信販売の申込みの撤回、契約の解除、契約の無効、取消しの意思表示」についての条項を入れることで、このような契約の取り消しを行う権限が任意後見人に与えられていることになります。
〇任意後見人だけでなく、任意後見監督人の報酬が追加で発生する。
任意後見契約は、任意後見監督人が選任されたときに発動します。つまり、任意後見人だけでなく、任意後見監督人に対する報酬も発生するため、本人の経済的な負担が増えます。
〇移行型の場合の財産管理契約は内容に十分な注意が必要
移行型の任意後見契約での財産管理契約は、契約内容によっては任意後見人候補者に財産に関する大きな権限を与えてしまうため、財産管理契約、任意後見契約の内容を慎重に検討し、条文も工夫する必要があります。
まとめとして
任意後見契約は、法定後見とは違って格段に自由度が高いことが良い反面、上記の様な十分に注意すべき事項もあります。
一番大事なことは、ご自身の希望と契約設計のバランス、契約条項の細かな検討です。そして、任意後見人候補者には、ご家族であっても、専門家であっても、本当に信頼できる人を選ぶようにしていただくのが重要です。
気になっているけど難しそう。時間がかかってめんどくさそう。そんな方は、ひふみリーガルオフィスにぜひご相談くださいね。契約について、公正証書について、わかりやすくお伝えいたします。
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