有限会社〇〇という株式会社

2006年施行の新会社法により、「有限会社」制度は廃止されました。
それ以後、新たな「有限会社」は設立できなくなり、実は、いまある全ての有限会社は、
「有限会社〇〇」という名前の株式会社、となっているのです。
それまで有限会社であった会社は、通常の株式会社へ移行する登記をしない限りは「特例有限会社」というカテゴリになり、原則は株式会社と同じとなりました。
特例有限会社の「社員」は株主、「持分」は株式、「出資1口」は1株、などに読みかえます。
株式会社の原則があてはまらないところとして、〇定款に規定がなくても株式の譲渡を制限する規定があるものとみなされる、〇役員の任期が無い、〇みなし解散制度の適用が無い、〇存続会社として合併できない、〇商号に「有限会社」の文字を抜かすことはできない、等々いくつかあります。
特例有限会社は、商号を株式会社に変更することで完全な株式会社へ移行できます。(移行しないままでいる選択もOKです(2025/7現在)。
有限会社を株式会社に移行する
特例有限会社が株式会社へ移行するには、登記申請が必要です。
商号にある「有限会社」を「株式会社」に変更する商号の変更手続きのことかな?と一瞬考えますが、実際には、「特例有限会社の解散登記」と「移行後の株式会社の設立登記」の申請を同時に行うことにより、移行を実現するしくみになっています。
ですので、一度、株式会社に移行すると「やっぱり戻りたい」と有限会社に戻ることはできません。解散してしまっているからです。(現行の会社法では新たな特例有限会社の設立はできません。)
そして、有限会社の解散後は、移行する株式会社の「設立登記」をします。これには新しい定款が必要なところ、この移行設立のケースでは、公証役場の定款認証が不要です。加えて、有限会社A という商号を、株式会社B という商号に変えて移行することも可能で、その際の登記にかかる登録免許税は、設立登記の免許税に含まれます。どういうこと??かと申しますと、諸々コミコミにできて登記の税金がお得になるかもしれない、ということです。詳しくは、次のメリットの段落に書きますね。
有限会社から株式会社へ移行するメリット
特例有限会社が株式会社へ商号変更するメリットをご紹介します。
〇会社の信用度が高まる
株式会社は、社会的に信用度の高い商号です。役員任期や決算公告など、特例有限会社に比べ義務が多いからこそ、商号に「株式会社」がついているということは、信用性が高いと判断されるケースが多いです。特に事業拡大やそれに伴う人材確保、出資を募る場合には有利になります。
〇経営の柔軟性が増す
経営におけるさまざまな局面で柔軟な組織作りができるのも、株式会社に移行するメリットのひとつです。たとえば会社の規模が大きくなってくると、経営に関わる全ての業務を株主総会が決定していくのは困難になりますが、株式会社になることで、取締役会を法定機関として設置できます。わざわざ毎回株主総会を開かなくても経営における重要な意思決定を迅速に行うことが可能です。会社の規模が拡大しても、多岐にわたる業務を迅速化・分業化することでスピード感のある経営が実現できます。
〇公開会社になれる
株式会社に変わることで、公開会社になることが可能になります。株主は会社の承認なしに譲渡制限のない株式の売買が行えるようになるので、株が市場に流通しやすくなり、株式公開することで上場できるので、広く資金調達しやすくなります。
〇商号・目的・機関などの変更がわりと自由
株式会社の設立登記の際に、商号を「有限会社A」から「株式会社B」という違う商号に変更できます。加えて、会社の目的も変更可能、取締役会や監査役などの機関設置・廃止も可能、もちろん役員変更も可能です。
しかも、登録免許税につき、通常は、商号・目的変更・機関変更・役員変更をしようとすると、7万円~9万円かりますが、移行設立の場合、移行による設立登記の免許税額に、だいたい全部コミコミで3万円~資本金の額の0.15%という金額となります。(※資本金の額が増える場合は別途その分の税金がかかります。有限会社の解散の登記も別途税金がかかります。)
ただし、本店の住所変更や支店設置等の変更については、設立登記と同時に申請は出来ず、別途の登記申請と免許税の納付が必要です。
デメリットも要確認
株式会社には、有限会社では免除されていたルールが適用されるので、それがデメリットとなる場合もあります。
〇定期的な役員交代が必要になる
株式会社では、役員交代を定期的に行います。役員の任期は最大で10年。同じ人が再任する場合も登記が必要です。
〇一定期間登記をしないと解散される可能性がある
株式会社では12年以上会社に関する登記を何もしていない休眠状態でいると、みなし解散させられるおそれがあります。みなし解散となっても3年以内はワンチャンあって、「継続の手続き」をとることができますが、登記簿に「解散」の履歴は残ります。さらには、3年経つと事業の再開はできなくなり、残された道は「清算」のみとなります。
〇決算公告に対する手間やコストが発生する
株式会社になると、毎年、定時株主総会後に決算を公告する義務が発生します。
こうした多くの義務を果たすことで「株式会社」としての信用は手に入れられますが、業務コストが増えるのはデメリットとも言えます。
手続きは煩雑になる
ご自分で行うには煩雑な手続きになるので、お近くの司法書士にご依頼ください。
ひふみリーガルオフィスでは迅速かつ丁寧にご対応いたします。お電話(026-403-0218)、お問合せフォーム、公式LINEからお気軽にご連絡くださいね。